私の好きな季節
Why don't I dislike autumn?
あなたの好きな季節は何ですか?
ある時、私はそんな質問を受けた。
そして私は、ゆっくりと、思うままの事を話し出したのだった。
そう、私は答えたのではなく、その質問に刺激を受けて、あるいは反応して、応えたのであった。
「私は夏が好きだ。
夏の暑さに耐える事をするのが好きだ。
エアコンを点けず、暑い部屋の中でじっとしている。
そして汗をダラダラ流す。
それが好きだ。
そしてまた、暑い屋外から、エアコンがガンガンに効いた、涼しい部屋に入り、冷たい氷の入った烏龍茶を、大量に、一気に飲むのが好きだ。
そう、無為自然な私は、夏が好きだ。
だが、考える私は、あまり夏が好きではない。
以上のようなこともあるから、嫌いではない。しかし好きでもない。
暑いと、体がダルくなる。思考が鈍る。
考える私は、だから夏を好かない。
同じように冬も好かない。
冬は雪が降る。綺麗な雪が降る。そして積もる。
穏やかに降り積もる雪が私は好きだ。
それは白くて、ふんわりとしていて、柔和な感じを与える。
真っ白な、雪のたくさん降り積もった、白皚皚(はくがいがい)たる雪の原というものは、そうそうお目にかかれるものではない。私はそれを見てみたい。
そう、無為自然な私は冬が好きだ。
だが、考える私は、あまり冬が好きではない。
以上のようなこともあるから、嫌いではない。しかし好きでもない。
冬は、日本の冬は、私にとって少し寒すぎる。
寒いと、すぐトイレに行きたくなる。朝起きるのがとても億劫になる。腹を壊しやすい。体がガタガタ震えるほどに寒く、考える事に集中できない。
だから私は、考える私は、冬をあまり好かない。
私は、暖かいのを好む。暑いのを好むのは、無為自然な私であり、考える私ではない。
考える私は、ちょうど良い暖かさを好む。ほんわりと包みこんでくれるような、ふっくらとした暖かみを。
だから私は、春が好きだ。
いや、無為自然な私が、春が好きだ。
考える私は、あまり春を好かない。
春は植物の季節だ。
植物の目覚める季節。
花粉が舞い散る季節だ。
私は花粉症だ。
鼻水をすすっていたり、かんでいたりと、そんなことを何度もしなければならない。
それでは考えることに集中できない。
だから私は、考える私は、春があまり好きではない。
では、秋はどうだろうか。
花粉について、秋はどうなのか私はよく知らない。
だからそれについては無視する。
では気温についてはどうだろうか。
冬ほどではないにしても、結構寒い。
私は結構な寒がりなので、これはちょっと厳しい。
では、秋において、冬の雪のように、何か良いものはあるだろうか。
秋は、食の秋だとか、スポーツの秋だとか、読書の秋だとか、色々言われている。
私は読書が好きだ。だが、どういう点において、秋は読書に適しているのだろうか。それが当てはまるのは、普段読書をしない人間にとってだけではないだろうか。
私は読書が好きだ。だからこれも関係ない。だから無視する。
秋は色々な木々の葉が、紅くなってから散ったり、そのまま散ったり、と、植物の死の季節だ。
いや、詳しく言うなら、死の始まりの季節だ。まだ死んではいない。死の季節は冬だ。
だが真に怖ろしいのは、死ではなく、死の始まりの方ではないか。
人々が怯えるのは、ホラー映画の、主人公が襲われる瞬間までの過程であり、実際主人公が死んでいるのが解ると、安心すらするではないか。
死んでからは何も感じない。死んでからのことなど誰も心配しない。
怖れるのは、死が訪れるまでのその過程。
だから、秋は恐怖を具現化した季節だと言える。
だから私は、考える私は、秋があまり好きではない。
だが、嫌いでもない。
秋というと、『赤い』イメージがある。それは紅葉のせいだろうか。
私は赤が嫌いではない。だが好きでもない気がする。
なぜならそれは、血を連想させるから。
私は赤が好きなのかどうか、よく解らない。
だが嫌いではない。
だから私は、秋が嫌いではない。
私は夏が好きではない。
私は冬が好きではない。
私は春が好きではない。
私は秋が嫌いではない。
はたして、私に好きな季節などというものがあるのだろうか。
解らない。
私には、何も、解らない。
そんな気がする」
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